第四の顔

     


入れ歯に大切な四つの顔

 「中が合わなくなってきたようですね」「少し小さすぎる(大きすぎる)ようですね」「歯がだいぶ擦り減ってきましたね」入れ歯の相談に歯科医院を訪れると、このような説明をよくお聞きになるでしょう。
専門的に言い換えれば、「あごと入れ歯内面の適合状態が悪い」「入れ歯の辺縁の設定位置(入れ歯の形)に問題あり」「咬み合わせの位置や高さが適切でない」ということになるのでしょうか。
  それぞれの問題点を改善することにより、より使いやすい入れ歯が出来上がるわけですが、ここにあげた入れ歯の三つの顔、すなわち「内面」「辺縁の形態」「噛む面」のほかに、忘れがちなもう一つ大変重要な四つ目の顔があります。
  今日はその入れ歯の「第四の顔」についてお語しいたしましょう。

第四の顔、研磨面の働き

 「第四の顔」それは、頬や舌あるいは唇と接触している入れ歯の外側のピンクの部分で、「研摩面」と呼ばれています。お使いの入れ歯をよくみていただくと、人工の歯が植わっているピンクの部分には微妙な凸凹の形態が作られていることに気付きます。

   

 

  これは何となくでこぼしているわけではありません。ではどんな意味があるのでしょうか。総入れ歯を例に取ってご説明します。
  内面の適合状態に問題がなく、辺縁が過不足ない長さに設定されていて、咬み合わせが正しく構成されている総入れ歯は、あごの粘膜との間に日常生活では差し支えのない吸着力を生じます。何もされず安静にしている状態では入れ歯が緩んで落ちてくることはないでしょう。
  しかしお食事をされているとき、お友達との楽しい会話、歌をうたっているとき、などなどあらゆる場面で頬や舌は常に動き、その形を変えています。
  このように入れ歯が機能しているある瞬間、入れ歯がすっと落ちてしまうのは、入れ歯とあごの粘膜の間に何らかの原因で空気が入って、その吸着力が激減してしまうことに起因しています。           

 

   


機能的運動への調和が重要

 空気が入らないようにするためには、「第四の顔=研摩面」と頬や舌との間に隙間を生じさせないことが非常に重要な要素になってきます。
  言い換えれぱ、入れ歯の辺縁からどれぐらい長い距離、どのくらい広い面積で研摩面と頬・舌が張り付いていてくれるかということになります。常に動き続ける頬や舌が入れ歯の研摩面に張り付いてくれるためには、その形態が頬や舌の機能的運動に調和したものでなければなりません。何となくでこぼこしているのではだめなのです。
  入れ歯にある四つの顔が患者さん個々のお口の中に調和してそれぞれ最高の笑顔を見せるとき、きっと使い勝手のいい長くお付き合いできる入れ歯に出会うことができるでしょう。
  お使いの入れ歯にひとつでも泣いている顔がないかどうか、ぜひ一度かかりつけの歯科医院で、ご相談されてみてはいかがでしょう。
                                           (鎌倉市歯科医師会 宮本績輔 宮本歯科医院)