鼾と歯科スプリントの応用

   
   

 鼾とは呼吸に同調して起る雑音を言います。
 いびきの雑音そのものは傍迷惑に過ぎませんがいびきをかいている人の状態がむしろ問題となります。
  睡眠中、いびきをかいている時に呼吸停止はあまり起らないが、上気道が非常に狭窄し空気の通りが悪いために努力呼吸を行わねばならない状態であり、眠っていながら体力を消耗し疲労してしまう状態を上気道抵折症侯群と言います。上気道抵抗症侯群には、自覚がありません。
  さらに進んだ状態では、いびきに続いて無呼吸が明確に起り、無呼吸状態が10秒以上続き一時間内に5回以上起る場合を、睡眠時無呼吸症候群と言います。
  これは睡眠中に上気道狭窄が起ると、いびきを発生し、その後に上気道閉鎖が起り無呼吸となる状態を言います。
  睡眠時無呼吸症候群は、三型類に大別され、中枢型、末梢型(閉鎖型)、混合型とに分類されます。
  中枢型は呼吸中枢が働かなくなり呼吸筋停止が起るために、いびきは起りません。
  末梢型(閉鎖型)は呼吸中枢は平常に働いており、無呼吸中も呼吸努力を認めますが、上気道の狭窄により、いびきが発生し、その後に上気道閉鎖を起すものを言います。混合型は中枢型より末梢型に移行して行くものを言います。
  ここに挙げました分類は病因によるものではなく、終夜睡眠ポリグラフィー(PSG)上の鼻腔口腔気流と胸腹壁運動との関係より分類した病型です。
  この三部類の内で最も多い症例は末梢型(閉鎖型)であり、睡眠時無呼吸症候群の90%以上を占ると言われております。世に睡眠時無呼吸症侯群として知られたのは、Drギレミノ−(精神科医)によって1976年に発表されてからです。 Drギレミノーは7時間の睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上、または、睡眠一時間中に5回以上の無呼吸が一回につき10秒以上続いたものを、睡眠時無呼吸症候群と称し、アプネア・インデックス(Apnea Index.)を診断基準単位としています。
  主症状は、(1)大いびき (2)渦度の日中傾眠 (3)睡眠中の移動 (4)夜間の多尿、夜尿 (5)早朝の頭痛 (6)性格の変化 (7)不眠 (8)夜間の窒息感、息切れ (9)その他、寝汗、性能力低下などがあります。
  主症侯は、(1)肥満 (2)多血症 (3)高血圧 (4)不整脈 (5)肺高血圧 右心不全などが起きてきます。
  しかし、自分自身で睡眠時無呼吸症侯群を自覚する事は難しい様であり就寝時に一緒にいる方が気付かれる事が多いようです。
  この疾病は正確な診断を必要としますので、耳鼻科の専門医によるポリソモグラフィ−(PSG)という医療器具を用いて、終夜において計測した結果による診断が必要であります。
  治療方法としては、(1)シーパップ(CPAP)という経鼻的持続陽圧呼吸装置を末梢型(閉鎖型)の治療に用います (2)外科手術により鼻腔内手術、咽頭拡大手術を行う方法などがあります。(3)歯科領域においては、鼻呼吸を出来る事が必要であり、スプリントの装着により舌根部の沈下及び軟口蓋筋による上気道閉鎖が起るのを防止する治療方法があります。
  しかし、末梢型(閉鎖型)においても種々の病状がありますので、適応症の選択が必要であり、末梢型(閉鎖型)であるからといって、スプリント療法が全てに有効であるわけではありません。
  歯科療法の一例としては、噛み合わせ(咬合)の異常、特に低位咬合が起因となり睡眠時に上気道の狭窄が起り、いびきの発生が起る症例がありますが、この症例に対しては顎位の補正を伴う咬合の改善により上気道の狭窄及び閉鎖が起るのを防止出来ます。
  この事からも、総義歯を装着されておられる方は、就寝時に総義歯を装着した状態で眠られる事をおすすめいたします。
  しかし、使用されている総義歯が何等かの原因により適合不良、噛み合わせ不良である場合は、歯科へ受診されて改善処置若しくは作り直されますよう、お願いいたします。 
 最後に、ここに記述いたしました内容は、あくまで鼾と睡眠時無呼吸症候群についての概略であり、この疾病は耳鼻咽喉科分野の疾病ですから、最初に耳鼻咽喉科を受診され、歯科における療法が有効であるとの指示依頼があった場合の治療方法が、スプリントを応用した療法であります。
                                                         高垣 樹 (高垣歯科医院)