歯と医療費の関係について  8020運動実績調査報告より

   
   

 「8020」運動については、ご存知の方も多いかと思いますが、「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という、生涯を通じた歯の健康づくりのための運動です。平成元年に、厚生労働省と日本歯科医師会により提唱されました。20本以上の歯があれば、ほとんどの食物をかみくだくことができ、味を楽しみながら食べることができると言われています。

歯数の少ない人ほど多い医療費

 いくつかの県の歯科医師会では、8020運動実績調査が行われきました。その中でも歯と医療費との関係について興味深いデータの得られた兵庫県歯科医師会の調査についてご紹介します。
  兵庫県歯科医師会では、平成13年から5年問、兵庫県国民健康保険団体連合会と協同で8020運動実績調査を行ってきました。調査データのうち、最新のものである平成17年5月分のデータの分析結果について説明します。
  この調査は、兵庫県内の歯科医院と、歯科以外の医療機関をどちらも同月中に受診した70歳から89歳までの国保加入者を対象として行われたものです。
  医療費は年齢の影響を受けるので、統計処理により、これを除外した上で、1カ月分の医科医療費について比較したところ、次のようになりました。

  歯数20本以上の人と比較して
@無歯顎(歯数0)の人は、約1万5千円
A歯数の1〜9本の人は、約7干円
B歯数10〜19本の人は、約3千円
それぞれ多い医療費を必要としていることがわかりました。

歯の数と全身の医療状況にも関連が

 これらの歯数の違いによる医療費の差は、統計的に有意差が認められました。また、歯の少ない人ほど、糖尿病、認知症、循環器系疾患、肺がんなどの有病率が高いとの結果も出ました。なお、私見ではありますが、歯の欠損のある人については、単に歯数のみならす、義歯使用の有無、ならびに義歯の適合状態について調査できれば、さらに有意義な研究となるものと思います。
  まとめると、歯の数と全身の医療状況との間に統計的関連が認められました。特に高額な医療費を必要とする高齢者に、歯の数の少ない人が多かったとのことです。さらに、病名別に、一人の1カ月あたりの医療費について、歯の数によって比較した結果、悪性新生物、循環器、呼吸器の各疾患において、有意差が認められました。
  ただし、歯数と全身の疾病との間の因果関係までは言及することはできないとのことです。歯数が少ないことが原因となり、全身の健康に影響を与えたのか、あるいは全身の疾病が原因となって歯数が減少したのかは、単年度の横断的調査だけからは、分からないためです。今後はこれまでの研究を発展させて追跡調査を行う予定とのことであり、さらなる調査、研究に期待したいものです。
  最後に、歯科疾患実績調査(厚生労働省)によると、80歳で20本以上の歯を有する人の割合は、平成17年に初めて20パーセントを越えたとのこと。80歳になっても、自分の歯を20本以上保つことは、健康で長生きをするための大切な目標と言えましょう。
                                             (鎌倉市歯科医師会 木村 典由 木典歯科)

参考資料・兵庫県歯科医師会のホームページ