噛み合わせと健康

   
   

 噛み合わせ(咬合)の異常が全身に及ぼす影響と対策について、1980年に米国イリノイ大学、A・C・フォンダとM・C・グゼイの両氏による日本国内講演が行われて以来、国内においても徐々に歯科医師による研究発表が行われてきました。
  各種報道機関により、その内容のごく一部分が紹介されましたが、咬合異常が全身に及ぼす影響についてはいまだ未解明な部分も多く残されており、なお一層の研究結果を待つところであります。
  しかし、現時点におきましても咬合異常の影響によるストレス、不定愁訴、顎関節症の一部、姿勢の歪みなどが咬合異常を治療することにより症状の改善や消失をみる症例が現実にあります。
  一例を挙げますと、咬合異常による顎位の移動とそれに伴う頭部、顎顔面、舌部、頸部に付随する諸筋群の調和、バランスの乱れが生じ、各種の疾病が誘発されます。
  そこで基本的対策は、諸筋群に生じた筋肉の歪みを筋肉自体による調和、バランスの作用によって取り除くことを目的とした顎位の補正と咬合関係の改善を行います。
  すなわち諸筋群の調和、バランスを図った後の適正な(顎位と咬合)は安定し維持され咬合異常によって誘発され生じていた疾病の改善や消失が起こり健康の回復が行われてきます。
  なお、長期間に及ぶ筋緊張を認める場合は、適度の顎運動、柔軟体操、理学療法、東洋医学療法などを指示により併せて行うのも治療の一助となります。
  ここに述べております内容は、主原因を咬合異常とする場合であって、器質的異常および他科領域の疾病が存在する場合は、歯科領域のみならず他科領域の診察と診断を基に治療方法を選択しなければなりません。
  顎口腔系疾患を単に歯科のみの疾患と考えず、身体全体を考慮し適切な治療を行うことが大切です。
  同様に、疾病に対しては身体の一部分の不調や症状のみをとらえて判断するのではなく、変調や症状を感じた場合は、それを兆候としてとらえ、原因が何であるかを調べ知るためにご自身で判断を行わずに医療機関における診察が必要となります。
  また、身体の変調を自覚する以前に疾病の予防と健康の維持には、健康診断を受診されますようにお願い致します。
  まとめ 医療におきましては、通常の場合、疾病に対し「一斑を見て全豹(ぜんびょう)を知る」愚考を犯さぬために詳細で綿密な診察を行い、正確な診断を下し、適切な治療を行います。
  したがって、歯科疾患に限らず、ご自身の身体の不調や現症を人伝に聞いた医療情報や報道機関によるごく一部分の医療情報を基にして当てはめ、ご自身で診断を下さずに医療機関に受診されますことをお願い致しまして、「咬み合わせと健康」についての概略を閉じさせていただきます。
                                         (鎌倉・大船歯科医師会 高垣 樹 高垣歯科医院)