警察協力歯科医

   
   

鎌倉市歯科医師会では、訪問診療・乳幼児健診・障害者歯科など様々な分野で仕事をしていますが、その中に警察協力歯科医があります。各管轄警察署に2名所属するのですが、鎌倉市には、鎌倉警察署と大船警察署があるため、現在4名の警察協力医がいます。

 その仕事内容は、まさしく警察に協力するのですが、主に身元不明人の捜査に係わってきます。 以前この紙面に掲載しました※「歯は物語る」でも紹介しましたように、単なる身元不明人だけでなく、腐乱死体や損傷の激しい死体など、個々の区別がつかない状況下において、歯の治療の痕跡は非常に役に立つのです。 かつて、1985年8月12日、羽田を飛び立った日航機123便が御巣鷹山に墜落し、乗員・乗客520人(奇跡的に4人生存)が亡くなった事故では、大勢の警察協力歯科医がその鑑別に活躍しました。大変な労力を要した訳ですが、この事故の場合は、乗客名簿が非常に役立ちました。520名の歯科カルテとレントゲンをすぐに取り寄せ、治療痕跡とカルテの比較、また実際にご遺体からレントゲンを撮り、取り寄せたレントゲンと比較するなどして鑑別していったのです。暑いさなかでもありご遺体の腐敗との戦いだったそうです。
  被害者数20数万人とも云われている、2004年12月26日に発生したインドネシア・スマトラ沖地震では、日本の警察協力医(法歯学関連者)のみならず世界の歯科医が身元確認に活躍しました。しかし、日航機墜落事故と異なり名簿など存在しません。家族からの訴えにより、その身元を確認していくのであります。ただし、多数は水死のためご遺体の損傷は少なく、個人の鑑別はたやすいのですが、難しいケースにおいては、すぐにかかりつけの歯科医より、カルテの写しとレントゲンが取り寄せられました。余談ではありますが、外国では遺体に対して自由にあつかえるケースが多いのですが、邦人の場合思想的に遺体を傷つける事を嫌うため、鑑別に時間を要したそうです。インドネシア・スマトラ沖地震のように、世界各国の方が被害にあった場合、国民性のみならず様々な問題が露呈してくることも経験されたそうです。
  いずれにせよ警察協力歯科医は、このような災害や事件に出動するのですが、歯科医であってもすぐに活躍できるものでもありません。多数の鑑別が必要な場合、個々の口腔内状況を(専門家であれば)誰が見ても判るように筆記しなければなりません。もちろんその筆記にはルールがあり、間違いのないように二人一組になり、確認していくのです。また、警察の鑑識の方も歯科医と一緒に勉強していただかなければなりません。歯科関連の言葉や略号、充填物の種類・特徴など理解するのは大変な作業です。遺体からレントゲンを撮るのも簡単にはいきません。生前のレントゲンと同じ角度で撮影するのは難しいのです。有事の際、すぐに出動できるために、日頃から訓練をしているのです。
※平成17年3月15日号に掲載
                                    (鎌倉市歯科医師会 田中 直人ミキプラザ歯科医院)