更年期と歯周病

   
   

 むし歯と歯槽膿漏(以下、歯周病)は、歯科の病気として良く知られています。むし歯が比較的若い世代に多いのに比べて、歯周病は、一般的には中高年に多くみられます。
  歯周病は、歯の周囲に付く軟らかい歯垢(プラーク、その約70%は細菌の固まり)が原因となって起こる感染症で歯ぐきから出血したり腫れたりするうちに、歯がグラグラになり、放っておくと最後には抜け落ちてしまいます。歯を支えている骨が溶けてしまうことで、歯が抜け落ちますが、これには、細菌感染以外に、その人の体質、生活習慣、ホルモンバランスなどが、その進行に大きく影響しています。
  女性は45歳から55歳の間に更年期を迎えます。更年期とは、閉経前後の数年間のことです。この時期には体内で分泌されていた女性ホルモンの急激な減少がみられます。これに伴って精神的・肉体的に様々な症状が出てきて、不安定になる時期とも言われています。
  更年期の症状としては、ほてり、のぼせ、冷え症、心臓がドキドキする、発汗、月経異常、性交痛、肩こり、腰痛などがあげられます。
  また、情緒が不安定になりやすく、イライラ、ゆううつ、不眠などもみられます。
  女性ホルモン(エストロゲン)が盛んに分泌されでいる時は、骨の形成も活発に行われています。骨密度は、20歳前後に最大となり40歳から50歳代にかけて、女性ホルモンの減少する更年期には、骨密度は急速に低下していきます。
  骨の量が、若い成人の70%未満を骨粗鬆症といい、70〜80%を骨減少症と呼んでいます(日本骨代謝学会、1996年)。骨粗鬆症は、女性に多く、特に更年期以降に急増してきます。そして、骨粗鬆症と歯周病とは深い関係があるのです。
  大腿骨と顎骨の骨密度は比例するともいわれております。歯を支えている骨が、スカスカになることは、歯がグラグラになり、抜けやすくなることにつながります。
  それでは、どのようにすれは、骨粗鬆症を予防し、歯周病の発症と進行を防ぐことが出来るでしょうか? 
  これには、毎日の生活習慣が大きく関係しているのです。
  理想的には、若い時からバランスの取れた食生活を送ることです。特にカルシウムを豊富に含んでいる食物(牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品、小魚類、大豆、豆腐や納豆などの大豆製品、小松菜、大根やかぶの葉などの緑黄色野菜、わかめ、ひじきなどの海藻類)や、カルシウムの吸収を促進する働きのあるビタミンDを含む食品(干ししいたけ、卵黄、レバー、さけ、かつお、さんま、まぐろなど)を摂取すると同時に、適切な運動をして、身体を丈夫にしておく事です。身体を作る時期に、ダイエットなどをすることは、好ましいことではありません。また、効果的な歯みがきの仕方を学習して、それを毎日実践することです。これは必要不可欠なことなのです。
  歯と歯ぐきの境目に、よくブラシを当てるようにして、デンタルフロスや歯間ブラシなどの補助器具も上手に利用しましょう。当てづらい、と感じるような場合は、遠慮せずに歯科医院で、聞いて下さい。各自に合った器具や効果的な使い方を教えてくれます。そして、半年に一度位は定期検診を受けることです。歯周病は、絶えず手入れをしていくことが、非常に重要なことなのです。
  また、閉経後の女性の症状をやわらげ、骨粗鬆症を予防するためには、最近ではホルモン補充療法も行われています。 
  ホルモン補充療法は、減ってきたエストロゲンを補う治療法です。この治療法に使われる女性ホルモンの多くは錠剤ですが、貼り薬も使われています。婦人科等の先生方に、よく相談してみて下さい。
  食生活においては、サプリメント(栄養補助食品)などの利用も必要なことかもしれません。食品からでは不足しがちなカルシウムなどの栄養素を充分に摂りたいものです。一方、喫煙は、生涯を通じて歯周病に好影響はもたらしませんが、特に、閉経後は、歯周病の回復を妨げます。禁煙は望ましいものです。
  健康で明るく生活していくためには、歯科受珍を面倒がったりしないで、積極的に歯の健康に取り組んでいくことが必要なのです。 参考文献 サンスター・デンタル・インフォメーション『更年期と女性の病気が気になる人へ』(井口登美子著・東洋出版) 『標準治療』(寺下謙三・日本医療企画)
                                                     細谷 真央 (真央歯掛クリニック)