固有の顎位

   
   

顎位の変化が招く、さまざまなトラブル
  咬合(噛み合わせ)について、以前に(※)概略を記述させていただきましたが、今回は、咬合の三大要素の第二番目の要素である顎位についてのお話をさせていただきます。
  人間は個人固有の適正な顎位を有しており、正常な校合構成により上下顎の調和が保たれておりますが、むし歯・歯牙破折・歯牙欠損・歯列不正・歯牙交換期における歯牙萌出状態の乱れなどによる咬合状態の変化に伴い、顎の変位が生じ、上下顎間における調和の喪失が起こります。
  顎位の変位に伴い、顎口腔系附随筋群にも調和の喪失が起こり、下顎開閉運動路の軌跡に乱れが生じ、習慣性のある咬合・顎関節症・不定愁訴・睡眠時無呼吸症候群・ストレス・肩こり・偏頭痛・腰痛などの誘因となります。
  また、適正な咬頭かん合位(上下の歯をしっかり噛み合わせた位置)を得られぬために、咬合時に咬合力の加わる方向が歯軸に対し一定方向とならず、局部床義歯(部分入れ歯)全部床義歯(総入れ歯)の不安定や義歯床の破折、または、陶材・硬賃樹脂などを用いた歯冠補てつ物(歯にかぶせる物)の破損や歯槽膿漏歯の動揺の増幅などの原因ともなります。

現症のみでなく、一口腔一単位の治療を
  これらの事からも、調和のとれた個人固有の適正位にある顎位が、いかに大切であるかを、ご理解いただけることと思います。
  歯科領域疾患の治療においても、患者さんが主訴とする現症のみを治療の対象とするのではなく、口の中全体をひとつの単位とした治療を併せて行います。そして器質的な異常を伴わない顎位の変位を認める症例に対しては、患部の治療はもとより、咬合調整・補綴修復・歯科矯正・スプリント療法などにより、顎口腔系附随筋群の調和と固有の適正顎位の回復を図ります。
  さらに併せて身体における調和をも図る治療が必要となります。 従いまして、歯科医院を受診される時には、主訴とする現症部位のみの治療だけに止まらず、口の中全体の治療を受けられることを、お考え頂きたいと思います。
  ここで、記述致しました内容は、歯科医療におけるごく一部分に過ぎないことを申し添えさせて頂きます。
                     (※)平成17年6月15日号に掲載     (高垣 樹 高垣歯科医院)