舌の話

 
   

舌の正常な姿とは

 身近な存在なのに、普段はなかなか自分で見ることのない口の中。ふとしたきっかけで鏡をのぞいてみたら、アラいやだ、これって何かの病気じゃ ないの?…と心配して来院される方が少なくありません。その中でも特に相談の多い「舌」について、今回はお話しましょう。
  まず、「正常な舌」の姿をご覧ください(図のAとB)。舌は筋肉と血管の塊で、その表面は粘膜に覆われています。通常見える表側の部分(舌背)は、粘膜 の表面に4種類の「乳頭」と呼ばれる構造が存在します。舌の衣面全体に分布する糸状乳頭、点在する茸状乳頭、舌の側面にある葉状乳頭、舌の付け根に 位置するボタンのような形の有郭乳頭です。

   
   



伸びては剥がれる糸状乳頭

 糸状乳頭は文字通り「糸」のように細い毛先が、数日の間に伸びては剥がれ、を繰り返しており、伸びっ放しで剥がれなくなるとその部分は白く肥厚し、 いわゆる「舌苔」になり、分解された食物や細菌などが貯留して口臭の一因になります。
  逆に剥がれっ放しだと、ピンク色の粘膜表面が露出し、食事中、刺激物がしみる原因になります。白い部分とピンク色の部分が混在し、日々形が変わ る場合は「地図状舌」と呼ばれ、ビタミン不足やストレスが疑われることがあります。


有郭乳頭のブツブツは正常

 有郭乳頭は、思い切り舌を突き出さないと見えませんが、奥の方に比較的大きなブツブツがあるので、「癌」を心配される方が多いようです。 もちろん有郭乳頭であれば、何の問題もありません。
  舌を上に持ち上げると、裏側(舌下面)が見えます。中央の付け根には「舌小帯」と呼ばれるヒダがあり、その左右両側に「八の字」に舌静脈という血管がうねうねと 走っています。静脈を流れる血液は酸索が少なく老廃物を含むため、青黒く(どす黒く)見えます。おまけに形が何となくグロテスクなため、この血管を見て「癌」を 心配される方も多いようです。人によっては左右で血管の形や太さが違うこともありますが、基本的には問題ありません。


かたちと色を時折チェック

 舌の異常は形だけでなく、色にも表れます。たとえば、舌全体が異常に赤い場合には悪性貧血、逆に白い場合には鉄欠乏性貧血など、全身状態が反映されていることがあります。また、部分的に白い場合、状態が長く続くようならカンジダ症、白板症、扁平苔癬などの粘膜疾患が疑われます。カンジダ症では、全身の抵抗カ (免疫能)低下の結果として出現することもあります。
舌の形にも色にも異常がなく、機能的にも正常なのに、なぜか痛みや違和感の続く場合があります。これは「舌痛症」と呼ばれ、心因性などの原因が考えられています。
  時々は、鏡に向かって自分にアカンベーをしながら、舌のチェックをしてみましょう。
正常な舌の姿をご理解頂いた上で、なお怪しいところがあれば歯科医院を受診されると良いでしょう。
 
                     (鎌倉市歯科医師会 小林 晋一郎 こばやし歯科)