べることは、きること   よくむことは、よりよく生きること

   
   

重要な咀嚼の役割

 健康な心身を保つために、栄養・休養・運動が大切だと言われています。栄養を摂取するために、よく噛んで食べること(咀嚼)は、とても大切です。咀嚼することは、食物の消化・吸収過程を助けること以外に、様々な役割があります。

@体内の血液循環を良くする(体温上昇)。
A食物中の異物を発見する。
B食物を唾液と混ぜて食塊を形成し、嚥下しやすくする。
C唾液分泌を促進する。
D歯肉、頬、舌などの粘膜の血流を増加させる。
E顎や口の中の様々な組織の生理的発育を促進する。
F口腔衛生を保持する。
Gストレス緩和効果がある。


  咀嚼の際には、「味覚」「温度感覚」「触圧覚」など多様な情報が脳に送り込まれます。大脳皮質の運動野の中で、咀嚼に関する運動野や感覚野などの意識レベル、学習・記憶、情報や本能、味覚、摂食の動機付け、運動に関わる広い範囲を活性化します。
  この運動により、学童と学生では学習効果が向上し、中高年以降では、脳の老化のリハビリテーション効果があったと報告されています。

唾液にも大きな働きが

 また、十分な咀嚼によって、その分泌が促進される唾液にも、様々な働きがあります。

@抗菌作用
A粘膜保護作用
B歯の再石灰化(を助ける)作用
CPH緩衝作用
D自浄作用など


  たとえば、食物に含まれる発がん物質は、唾液に30秒ほど漬けておくと、そのほとんどが消失します。また、唾液に含まれるIGFというホルモン(インシュリンと同じような働きをする)は、糖尿病の治療効果を向上させます。
  糖尿病の目安とされている血糖値は、よく咀嚼することによって(一口で約30回くらい)、食後20分後から下降すると言われています。咀嚼による満足感、適正な満腹感で、食べ過ぎの予防にもなります。

健全な咀嚼のために

 唾液の効果も含めて、咀嚼することは、非常に大切なことです。では、具体的には、どのようなことに注意していけば良いでしょうか。
  やはり、むし歯や歯周病などで痛みがあれば、十分な咀嚼はできませんので、早めの受診治療が必要です。
  また、歯並びなどで良く噛めない場合は、矯正の先生に相談してみるのも良いです。歯が抜けたままになっているのを放置すれば、歯列のバランスが崩れますし、片(側)噛みの原因になることもありますので、受診が必要です。
  高齢者で義歯を入れている方が、以前より食事量が減ってきた場合には、義歯が合わなくなっていることも考えられますので、ご家族の方も注意してあげてください。
  良く噛んで食べるために、そして、全身の健康を考える上で、柔らかいファーストフードのようなものばかりではなく、ある程度、噛みごたえのある食事も選んでください。もちろん、栄養のバランスは大切です。
  寝たきりで、口から食べることができなかった方の口腔ケアを行うことにより食べることができるようになることもあります。良く噛んで食べること、咀嚼する、ということの大切さを、再認識していただきたいと思います。

参考文献
・「より良く食べるはより良く生きる」(月刊保団連)
・「生きる力を支える歯科治療」(日本歯科医師会)
・「咀嚼と精神ストレスの緩和」(櫻井薫)
   
                                     (鎌倉市歯科医師会 細谷真央 真央歯科クリニック)