調和

   
   

 大自然の美しさや、生命の維持に必要な要素として調和があるように、人間の生命や健康の維持に、調和は重要な要素の一つであり、この調和に疾病などで乱れや喪失が起きると、不定愁訴や、他の疾病誘発の因子ともなります。
 従って疾病の治療に際しては、主因を突き止め治療を行うと共に、失った調和の回復をも必要とします。
 歯科領域の疾患で、噛み合わせ(以後、咬合と言う)の構成を必要とする症例では、器質的な異常を伴わぬ場合において、顎口腔系附随筋群の筋肉自体の自然な調和(Symmetry of the Muscles)を基として、顎位そして咬合構成の順に従って、咬合の再構成が行われると、顎の動きがスムーズになり安定した動きと噛み合わせになります。
 従って、咬合の不正に伴い誘発された、ストレス、顎関節証の一部、睡眠時無呼吸症候群の一部、後頭部交感神経症候群、不定愁訴等が改善され消失します。
 他方、人為的矯正力を含むControl of the Muscles.(Muscles Control.と一般にいわれる)により顎位を求めた場合は、顎口腔系附随筋に潜在している歪みは消去されていない為に、時間の経過に伴い咬合位の移動を多見いたします。
 さらに、大臼歯部における上下顎の適正な顎位を求めていない為に、顎位及び咬合の維持安定を得られません。
 判りやすく表現すると、人間の顎と同様に蝶々、鳥、トンボ、動物の関節は、付随する筋肉や腱の調和により機能を保ち活動しており、これらの調和は矯正力によって得られたものではなく、建物の扉のように蝶番で固定されたようなものではないのです。
 この様に、人間の健康や大自然の環境を保つうえでも、調和は欠かせぬ重要な要素です。
それ故に、う歯、歯牙欠損、半埋伏歯、植立方向異常歯、歯列不正、歯槽膿漏症などの疾病は放置せずに治す必要があります。
 併せて予防を行うことも大切な要素の一つです。
 口腔内の清掃が疾病の予防において、如何に大切かについて羅先生(全身疾患への影響−口腔清掃の重要性)、細谷先生(更年期と歯周病)、が記述されました記事でお気付きのことと思います。
叉、最初から医療に任せるのではなく、大切なのは疾病の予防を自らが心掛けることであり、疾病にかからぬのが名医であり名医は誰の内にも存在するのではないでしょうか。
 医療の根源に、手当てと言う言葉があります。それは病む所に手をあてがい、病を知り癒すというだけではなく、人を知り互いに信頼を置く事の大切さを説いているのだと思います。
幼かった日、冬の寒さに悴んだあか切れの手に、転んで擦り剥いた傷口に、そっと息を吹きかけ包んでくれた、やさしい温かい手が痛みを癒してくれたように、医療は患者さんと社会(周囲の人々)と医療従事者との信頼と協力と努力の元になりたっているのです。
                                                          垣 樹  (垣歯科医院)